2008年7月30日水曜日

ジャンダルム敗退

やっとブログに山らしい山を載せることが出来ると思ったのに・・・

雨と風と雷の中ジャンダルム直下で一晩ビバーグになってしまったけど、何とか下山出来ました。

以下雑感です。

27日の5時半に西穂山荘を出発。
8時半に西穂高岳山頂。
西穂岳でガスが晴れて槍ヶ岳が綺麗に見渡せるようになりました。


西穂独標


西穂高岳山頂を北側から見る。こんなに天気がよかったのに・・・



間ノ岳・天狗岳方面

これからがすべて危険ルート。
10時に間ノ岳通過。また、ガスって来る。


畳岩の尾根方面 ?

11時に天狗のコル。遠くで雷の音がするのが聞こえる。雨がパラついて来たのでカッパを着て様子をみながらお昼。
ここで岳沢方面にエスケープするか検討するがルートが雪渓で分かりづらいしガレて危なそう。西穂山荘に戻るには時間がギリギリ。途中、どこかで停滞したら山荘に戻るのも無理だろう。ここまで来る間に簡易ツエルトでビバーグ出来そうな場所は無かったし、すでに出発してから6時間近く経っている。穂高岳山荘までならあと、3~4時間か。進む事にする。ダメなら天狗のコルまで戻り避難小屋跡でビバーグすることに決定。

2時にジャンダルムにあと少しの地点で、周囲の石が不気味な音を立てて放電し始める。と、同時に髪の毛が逆立つのが分かる。
直ぐに岩陰に避難。強風と叩きつける雨と雷の中でじっとしているがひどくなる一方・・・やがて雨が雹になり、寒くて体が震える。頭の上は雷が吼えまくっている。
これ以上進むのは無理と判断して風が当たらない場所までじりじり後退。
ツエルトを被って雷の通過を待つ。
5時にやっと雨と雷がやんで晴れ渡って来る。でも、稜線は強風。
360°見渡せるようになる。眼下には上高地。前穂、奥穂、槍、笠ヶ岳、西穂、焼岳、霞沢岳、が良く見える。たぶん白馬や剣も見えている。夕日に輝く前穂が美しい。


西穂高岳と焼岳。


夕日が当たる霞沢岳と上高地。さっきまでの嵐はなんだったの?


前穂高岳。夜の8時頃移動していたパーティーに・・・


奥穂高岳。あと、もう少しなのに・・・


槍ヶ岳方面。立山、剣は・・・見えないかな

日没まであと2時間。頑張れば穂高山荘まで行けそうだけど、暗くなってからの移動は危険なので、明日の天気を期待してビバーグに決定。動かなければ取り合えず生きているし。
ドコモの携帯はアンテナマークが3本立っている 。実家に電話し、ビバーグをする事を伝える。ラジオの感度もいい。
食料は沢山あるが水が少ない。2人で1ℓ弱。
雨がやんでいる内に着替える。
上はTシャツ2枚+フリース+ウインドブレーカー+ゴアテックスのカッパ。
下はフリースパンツ+ズボン+カッパ。靴下2足と靴。
着れる物はすべて着る。首にタオル。カイロ2つ。
石を利用して簡易ツエルトを張りエマージェントシートを敷く。
体を温める為、残り少ない水でレガーのパスタを作る。残りあと500㏄。

夜は長い・・・うとうとしながら夢を見る。すべて救助関係。
ビバーグのすぐ近くに避難小屋があったり、山小屋あったり、はたまたコンビニがあったり・・・心が病んで行くのが分かる。
時計との睨めっこ。外は風と濃霧。しかも寒い。

28日朝、晴れの期待は見事に裏切られ5時位から嵐。頭の上で雷が走る。また、雹になる。ツエルト内に浸水。寒い。
ラジオは雷の雑音で聞き取りづらいが岐阜県は大雨・雷警報なんて言っている。富山県は大雨で川が氾濫したらしい。大変だなぁ、なんて言っていられない。こっちも切羽詰っている。
もう一泊?。
これ以上のビバーグは精神的に無理。ツエルトから早く出たい。
9時半に雷がやっと遠ざかりはじめる。雨も弱くなる。
チャンスは今しかない。危険でも岳沢を下る事に決定。
手早く準備をする。溜めた雨水をテルモスに入れて出発。
天狗のコルまで慎重に下る。
11時天狗のコル。 ほっとする。上高地側は風が無い。
岳沢を下り始めるが、ガレって凄く危ない。直径1m位の石が簡単に動く。しかも急登。
雪渓でルートが消えている。アイゼンがないと危険すぎる。上高地側は風がないけど濃霧でルートがまったく見えない。奈落の底に落ちて行く様だ。「こっちのが楽だぞ」と手招きされているような気がする。GPSはあるけど・・・水の心配もないけど・・・第六感が「ヤバイ」って言ってる。

12時に天狗のコルに登り戻る。時間と体力を浪費。
避難小屋跡でビバークも考えたけど、ツエルト内に逆戻りはイヤだ!
あと一晩耐えられそうにない。耐えられたとしても翌日に動ける自信もない。

幸い雨が止んでいる。相変わらず飛騨側からの風が強い。立っているのがやっと。たまに吹き飛ばされそうになる。
運を天に任せて西穂山荘に戻る事にする。

どの石もつるつる滑る。慎重に取り付くので時間がかかりすぎる。
右手、左手、右足、左足と一箇所づつ確認。三点指示を心がける。
新調した手袋もすでにボロボロ。爪も割れている。
間ノ岳山頂は強風。飛ばされないようにはって通過。
逆層スラブはクサリにぶら下って降りる。


前の日の逆層スラブ。これが雨で濡れているなんて・・・(><;)

4時に西穂高岳。ここからはずっと横風を受けながらの下山。
5時半にピラミッドピーク。
6時に独標。ここからは初心者コース。助かった。
最後の一口に取っておいた水を飲みほす。雨水は飲まなくて済みそうだ。

一昨日の西穂山荘は団体客で混んでいて。布団1枚に2人。あまり寝られなかった。
昨日は当然、ほとんど寝てない。しかも今日は連続8時間近く滑りやすい岩との格闘。
時間や距離の感覚が無くなっている。つまずきそうになりながらも慎重に下る。
下っても下っても山荘が見えてこない。どんどん不安になって来る。
GPSで現在位置と予め登録しておいた山荘の位置を確認。
当然、間違ってない。道はこれしかないハズだ。あと少し。
しかし、なかなか山荘が見えて来ない。
また、GPSで確認。
合っている。直ぐ下だ。GPSを持ってって良かった。精神安定剤になる。

7時、暗くなる寸前に西穂山荘に戻る。何とか生還。

27日から29日にかけて穂高連峰では死亡事故が相次ぎました。
涸沢岳で滑落。
前穂高で落石。
奥穂高で滑落。

僕の判断が良かったのか悪かったのか分からないけど無事に下山出来たのだから間違ってはいなかったのだろう。
今、こうしてパソコンに向かっているのが何だか不思議。
本当に山に行っていたのだろうか?もしかしたら、今こうやっているのが夢で実際はまだビバーグしていたりして・・・


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